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ナソップ運動による活動


1.児童法の普及活動

ナソップ運動は権利を主張するために、児童に関する全ての法律を勉強し、冊子やポスターの作成、勉強会の開催などによって、多くの人々と学びの機会を共有することにより、社会全体が持つ子供に対する意識を変革するための努力を続けています。

集まって意見を交換し合う子どもたち 子供はみんな、生まれたばかりの赤坊から成人間近の大きな子供まで、人間としての権利を持っています。子供たちがその権利を主張でき、尊重され守られる社会環境を作ることは国の重要な責任と考えています。ペルーでは、1992年12月に児童法が施行されました。この法律は私たちの権利を公に認めているものです。

児童法は法令第27337条によって制定されました。制定後も度重なる改訂を重ねてきました。2006年ペルー共和国議会は、新たに子供・青少年法の改正を決議しました。さらに、ナソップ運動も協議に参加し、共に討論を重ねた末、法令第28914条により、児童法の法律改正特別委員会が設置される運びとなりました。


児童法改正に関する子供たちからのコメント

ロシン・サモラ・ガルシア
(MANTHOC全国代表、15歳、カハマルカ出身、中学校に通いながら木工所で働いています。)

「ペルーの児童法が改正されることは、とても重要なことだと私達は考えています。なぜなら、現行法には児童の現実にそぐわない条項が存在しているからです。たとえば、働く子どものケースでいえば、労働が許可される最低年齢に言及した条項は、ペルーにおいても数多く存在する12歳以下の働く子供達をどのように保護していくかについて、何も検討されていません。

法律を勉強する少女 子供の権利条約や児童法には、子供達は、自身に直接関わりのある問題において発言する権利を有すること、また、そのような問題を取り扱う際には、行政側も子供達に意見を伺う必要があるといった条項が存在します。つまり、大人達は、児童ネットワークのような子供の組織や、学童市議会、その他児童に関わる施設や機関の子供たちの意見に耳を傾け、その発言に価値を与えなければならないということです。そのためには、子供達が住む環境や現実が持つ多様性、特に、地方の子供達が持つ状況にも目を向けなければなりません。私達は、法律改正委員会に子供達を含めることを提案します。」



2.“子供のために投票しよう”キャンペーン“(2006年度実施)

“子供のために投票しよう”と名づけて、ナソップ運動と学童市議会が中心になって開催したこのキャンペーンは、セーブ・ザ・チルドレン・スウェーデンやその他各種団体の支援によって行われました。キャンペーンの目的は、2006年度に行われた大統領、国会議員、県知事、及び市長選挙の立候補者に対して、子供たちのことを十分に配慮した政策を提案するよう要求することにありました。特に、大統領選立候補者に対しては、子供たちが抱える問題に対する解決策の早期立案を誓わせようという狙いがあり、それに併せて投票権を持つ大人に訴えていくこともキャンペーンの焦点に据えました。

ライラ代表 ナソップ運動と児童市議会のメンバーは、リマ、アレキパ、クスコ、イキトス、アヤクチョの各県でこのキャンペーンを展開しました。国会議員立候補者やメディア関係者のためのワークショップを開催し、政府の政策立案者との議論の場を設けるなどした他、様々な行政機関を訪れては、子供たちが抱える問題を訴えてまわりました。

“子供のために投票しよう!”キャンペーンの目的を達成する一つの手段として、ペルー各都市の広場で一般市民との対話の場を設け、子供たちが抱えている問題を市民がより明確に理解できる機会を提供しました。その他、キャンペーンのスローガンを掲げて街中を行進することによって世論に対する呼びかけを行い、投票者の一人一人が子供たちの抱える問題に対してより具体的な解決策を提案できる候補者へ一票を投じてくれるように呼びかけました。結果として7名の大統領候補者及びその代理人が、ナソップ運動が作成した以下の誓約文に対して署名を行いました。

誓約文
  1. 子供に関する政策の作成や決定の際には、子供たちが積極的に参加する権利を認めること。
  2. 国家や社会レベルまたは家族内で頻繁に繰り返される、子供に対する精神的、肉体的虐待に対する解決策を早期に提案すること。
  3. 子供のニーズを真に満たすことのできる公教育の場を提供すること。特に、教師の再教育、及び教育部門に対する公費の大幅増額を要求する。
  4. 働く子供たちの権利を保護し、彼らに対する相応の社会保障を確約すること。
  5. 栄養不良状態にある子供たちに対して、無償の食事提供プログラムを開始すること。国内に現存する栄養不良問題全般を早期に解決すること。
  6. 児童の性的搾取に対する予防、撲滅に努めること。

3.マイクロ・ファイナンス・プログラム (PROMINATS)

PROMINATs全国大会:ペルー北部ピウラ代表3人の少女 “働く子供やコラボラドーレスの中から小さな企業家を育てよう!”と名づけられたこのプロジェクトは、マイクロファイナンス・プログラム(PROMINATS)によって運営され、働く子供たちがコラボラドーレスと共に物の売り買いについてのノウハウを学び、実際の生活の場に生かしていくことを目的としています。

このプロジェクトでは、働く子ども達に対して経済活動を行うための正しい知識の提供や、小さな商売を始めるための資金の貸し付けを行います。
そして、子ども達が自らの商売で得た収入を貯蓄する習慣を身につけ、彼らの生活条件が改善されることを目的としています。日々の生活上での経験や組織内での活動をもとに、このプロジェクトを通して働くということの意味を改めて評価し、個人の経済活動がより発展していくことを期待しています。

マイクロ・ファイナンス・プログラムの仕組み
(*S/はペルーの通貨単位ソーレス)

今までの経験上、多すぎず少なすぎない金額として一人当たりほぼS/170-(約6400円相当)を初期資金として渡しています。事業によってその額は変わりS/80-(約3000円相当)の場合もあります。
借り手の子どもはS/170-を受け取ると同時にPROMINATsに口座が開かれます。受け取った金額の10%のS/17-は強制的に貯蓄に回します(この貯蓄は借入資金を全額返済し終わったときに受け取ります)。現金として受け取るのはS/153-。ここからスタートです。

たとえばS/170-を8回払いに分けるとして、1回分の返済の基本額はS/22.5-です。このS/22.5-に利子として1%分のS/1.7-を足します。さらに1%の貯金(これは最初の貯金とは別に)S/1.7-も足します。これらを合計してS/25.9-を毎回返済金として支払います。
この貯蓄分のS/1.7-は返済が終了したときに借りている子どもに渡されます。つまり、S/1.7-×8回=S/13.6-になります。最初の(強制)貯金S/17-も、もちろん返還されるので、融資した金額を返済し終わった際はS/30.6-が渡されることになります。

返済利息などは支部によって期間が違います。たとえば15日締め利子は1%の支部、月締め利子は3%のところもあります。この利子で集まったお金は経費(集金に行くバス代など)に使ったり、借り手である子どもの誰かが支払い不可能になったときや、逃げてしまったときの穴埋めなどに使われています。

PROMINATs全国大会:ペルー南部フリアカ代表の姉弟 このプログラムが継続している現時点(2008年7月)で返済できない子どもも発生したりし始めています。パチャクテ地区のようにプログラムを始められなかったところや、融資の講習会までたどり着いたけれども誰もプランを提出しなかったところもあります。

この仕組みは子どもたち(NATs)自身が考えだし、グループ内部の何回もの会議で討議された後に出来上がってきたものです。子どもたち同士の信頼と責任が前提となっています。


このマイクロファイナンス・プロジェクト「プロミナッツ」が行ったいくつかの事例を紹介します。

2006年よりアレキパ、プーノ、フリアカにて試験的にこのプロジェクトが行われました。
そしてアレキパにてPROMINATsプロジェクトとして、現在ピウラ、ハエン、バグア・グランデで行われているような長期の貸付に変えられました。現在ペルーでは6ヵ所のPROMINATsと、更に3つのPRE-PROMINATsがプカルパ、ランバイェケ、リマで準備されています。

ピウラでは、2007年にPROMINATsプロジェクトのメンバーがNATsやコラボラドーレスを教育しました。この講習で、まず56案のプランが貸付を受けられその後24案が貸付を受け、現在彼らは最後の分割払いをしています。

ハエンでは8つの共同ビジネスへの信用貸付を提案し、承認され、すでに78%が回収済み、つまり5つのビジネスプランがすでに支払いを終えています。残りの3つのプランも現在最後の分割払いを支払うところです。

プーノでは6つのビジネスプランに投資し、すでに100%の回収率を成し遂げています。このことが認められ、次のステップとして11案のビジネスプランに貸付が行われました。

フリアカでは更にペルー警察のCORIBRI※のコラボラドーレスの協力もありました。そして貸付資金の初期投資のうち81%が回収されております。次のステップに向けて検討され、承認された11案のビジネスプランが提示され、現在NATsは2度目の分割払いを支払ったところです。(※警察内のプログラム、町で働く子供に協力的なもの)

アレキパでは貸付資金の82%が最初の段階で回収されています。PROMINATsのチームは常にNATsやコラボラドーレスと貸付の回収の達成のために集まります。
全ての地方のPROMINATsプロジェクトにて非常に高い貸付の回収率が見られ、NATsの自立意識の高さを証明しています。


4.講演会:社会の危機に直面する子供達

2007年8月14日サン・マルコス大学社会科学部のラウル・ポラス・バレネチェア講堂にて、故永山則夫をテーマとした討論会が開催されました。

集まって意見を交換し合う子どもたち 「この8月で、日本の作家、永山則夫の死刑執行より10年が経過しました。永山則夫は、極貧の中、働く子供としてその少年時代を過ごしました。彼は、幼い頃に親に捨てられ、19歳の時に殺人を犯しました。彼は、30年間にも渡る獄中生活の後で、死刑となります。彼は、獄中で作家活動を続け、結果として日本でも著名な作家となったのです。彼は、ある新聞記事を通してペルーの子供組織の存在を知り、働く子供達の中に彼自身の幼年時代を映し出しました。そして、彼は作品によって得られる印税をナソップ運動に託しました。この寄付金はナソップ運動の拠点である事務所建設資金にも使用されました。永山則夫は働く子供たちと共に生き続けます。働く子供・青少年の教育機関であるINFANTはINFANT-NAGAYAMA NORIOと彼の名前を付け、彼が働く子供達に託した夢を引き継いでいます。」

このイベントには、パネラーとして日本の永山則夫基金より義井豊氏、イタリアのITALIA NATsよりギアルギ・スティボット氏、スイスのTerre des hommes lausanneよりジェアン・スティミス氏、ペルーのサン・マルコス大学よりマヌエル・カスティージョ氏、そしてIFEJANTよりアレハンドロ・クシャノビッチ氏が出席しました。さらにINFANTの芸術学校EAINFANTにより永山則夫の人生を再現する感動的な独演も行われました。


5.子供の権利委員会による政府に対する勧告内容の普及活動

勧告内容についての冊子(表紙) 2006年1月12日、ペルー政府は、国連子供の権利委員会に対して、子供の権利条約がどのような形で政策に反映されているかを記述した第三回定期報告書を提出しました。

子供の権利委員会の第41回会合においてこの報告書は審議されることとなり、その際にナソップ運動の代表者がラテン・アメリカ及び世界レベルで初めて国際レベルの公式な会合に参加することとなり、報告書の審議にナソップ運動の意見を反映させました。

同年1月27日、子供の権利委員会は、ペルー政府に対して“第三回報告書に対する勧告と最終審議”を提出しました。ペルー政府は、委員会からのこの勧告を自らによって国民に通達しなければならず、その勧告内容を政策に反映させていかなければなりません。

「ナソップからペルー政府への質問状『国連第41回子供の人権委員会』に提出された『子供に関する報告書』に関して」

私たちは、第41回会合への参加を通して、子供の権利条約をめぐるペルー政府に対する勧告内容を、子供たちに対してだけでなく、一般市民に対して、または市町村、地方、国家レベルの各行政機関に対しても普及していくことの重要性を感じました。
このプロジェクトには、行政機関やNGO、その他専門機関に子供の権利委員会より出された勧告内容を、一般市民に向けて公開させるという狙いがあります。また、この国において子供の権利が認知され尊重されるよう条約に基づいた政策がとられること、委員会による勧告内容が政策に反映されているかどうかの監査に子供たち自身を主体的に参加させることなどを要求します。

勧告内容についての冊子(内部) このプロジェクトには、“ペルー子供の全国ネットワーク”がナソップと共に重要な役割を果たしています。彼らとの共同活動を通して、勧告内容の普及だけではなく、社会の中でプロタゴニズムを実践することによって私たちの権利を要求し続け、子供を妨げる原因を取り除こうと努力を続けています。
現在、この勧告内容を普及させるために、ナソップ運動の拠点がある18の都市でイベントを開催しています。メインイベントとして、子供の権利委員会のメンバーである、ロサ・マリア・オルティスさんを招いて勧告に関連したフォーラムの開催しました。

なお、2006年には勧告の内容を解りやすくまとめた冊子をスペイン語版、ケチュア語版と2種類の言語で作成しています。


2007年7月1日から6日まで国連子供の権利委員会のメンバーであるロサ・マリア・オルティスさんがナソップ運動と子供・青少年ネットワークの招待によりペルーに滞在した際に行われた、ナソップ運動代表者によるロサさんへのインタビュー内容です。(橙色がロサ・マリアさん)

――ロサ・マリアさん、ペルーに来る前は私達のこの活動に対してどのようなイメージを抱いていましたか?

そうですね、ペルーに子供・青少年のネットワークがあり、勧告内容の普及活動を去年から行っていることは知っていましたが、それほど多くは知りませんでした。しかし、今回の滞在を通して、あなたたちが、どのようにして勧告内容の普及に取り組んでいるかをより詳しく知ることができました。

――いくつもの子供の組織が、国連子供の権利委員会からペルー国政府に提出された勧告内容の普及活動に参加している事実を確認されて、どう思われましたか?

国内21ヶ所で開催された素晴らしい普及活動や、子供だけではなく、政府や各機関に対して行われた講習会、さらには政府や権威のある人々と対等に渡り合えるその交渉力にはとても驚かされました。劇や音楽などを交えて行われる講習会や、スペイン語のみならず、ケチュア語の冊子まで作成して勧告内容の普及に努めているあなた達の姿には、ただただ感心させられるばかりです。それにも増して私を驚かせたのが、勧告内容が社会政策にしっかりと反映されるよう、行政との交渉を重ねているという事実でした。勧告内容が政策に反映されることは、子供達にとっても非常に重要ですし、我々子供の権利委員会としても非常に嬉しく思います。

――NATsの組織からの報告、つまり、ペルーの子供達の状況に関する子供達自身による報告は、どんな重要性を委員会に与えますか?

そうですね、委員会に実際の子供達自身の声を伝えることはとても重要です。子供のニーズや子供の権利に応えていくことは我々の義務ですが、委員会に子ども自身の声が届くことは今まで稀でした。あなたたち子供側からの情報はより事実に忠実で、そのことが我々の任務をより容易にしてくれました。

――このペルーでの体験を、どのような形で委員会に報告しますか?

私は、あなたたちが作成した勧告内容に関する冊子やCD、そしてあなたたちと過ごした経験を委員会へと持ち帰ります。委員会の同僚たちにペルーの子供達のすばらしい普及活動のこと、彼らは彼ら自身の権利のために、どのような方法で勧告内容を政策に反映させていくかという、非常に価値ある手本を示してくれていることを伝えたいと思います。

演劇にて自分を表現
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